離婚でペアローン住宅を売却する際の課題と対策、トラブル防止・解決のための注意点とは

夫婦2人がそれぞれ住宅ローン契約をすることで、単独ローンと比べて多くの借り入れが可能になる「ペアローン」。お互いの絆を確認し合うために、購入時にあえてペアローンを選択する夫婦もいるようです。しかしその後に様々な事情で離婚を決断し、住宅を売却することになった場合には、単独ローンの住宅と比べて検討事項や注意点が多くなり、ただでさえ複雑な離婚手続きをますます難しくする要因になりかねません。このページでは、ペアローンで購入した住宅を売却する際の課題や注意点、トラブルを防ぎスムーズに売却するためのポイントをわかりやすく解説しています。
目次
1. ペアローンとは?
ペアローンとは、夫婦がそれぞれ住宅ローンを契約し、お互いが連帯保証人となって住宅を購入する方法です。1人名義よりもペアローンの方が借入可能額が高くなる場合が多く、より高額な住宅を購入できる可能性があります。また夫婦それぞれが住宅ローン控除を利用できるため、節税対策としても有効です。しかし将来離婚することになった場合に、単独ローンと比べて取り扱いが難しくなるため注意が必要です。
単独ローンとペアローンの借入可能額比較例
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夫名義のみの場合 |
ペアローンの場合 |
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夫の年収 |
600万円 |
600万円 |
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妻の年収 |
- |
400万円 |
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世帯年収 |
600万円 |
1000万円 |
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借入可能額(目安) |
約4500万〜5000万円 |
約7000万〜8000万円 |
※35年返済、金利など一定条件を想定した一般的な目安です。実際の借入可能額は金融機関や審査条件によって異なります。
ペアローンのメリット
- 借入可能額が増える
- 2人分の住宅ローン控除を受けられる
- 2人ともが団体信用生命保険(団信)に加入できる
- 返済計画の自由度が高くなる
ペアローンのデメリット
- どちらかの収入が減ると返済が難しくなる
- 契約にかかる諸費用が2人分になる
- 離婚したときの取り扱いが難しくなる
2. ペアローン住宅を売却するときに気をつけること
夫婦が離婚することになり、ペアローンで購入した戸建てやマンションなどの持ち家を売却する場合、単独ローンにはないいくつかの課題が発生します。離婚を考えるとき、話し合いをするときには、以下の課題をふまえて検討するようにしましょう。
2-1. 片方だけの意思では売却ができない
ペアローンで購入した住宅は夫婦の共有資産であり、売却するためには、共有名義人である夫婦双方の同意が必要です。それぞれの署名と実印による捺印、印鑑証明書、住民票、本人確認書類などが必要になるため、お互いが納得できる条件を確認し、連絡を取り合える状態のうちによく話し合い、売却条件の取り決めを行いましょう。
2-2. お互いのローンと連帯保証人としての関係は継続する
離婚してもペアローンは解消されず、お互いがローンの連帯保証人であることも変わりません。離婚後に一方の返済が滞った場合は、もう一方に一括返済の義務が生じるため、ペアローンを残したままの離婚はリスクを伴います。ペアローンを解消するためには、ローンを完済する、単独ローンに変更するなど、一定の費用と手続きが必要になります。
2-3. 単独ローンへの借り換えは条件が厳しい
ペアローンの残債を一括返済できない場合、単独ローンに変更するのは容易ではありません。2人分だった世帯年収が1人分に減り、借入可能額が大幅に下がるため、新たなローンの審査に通らない可能性があります。特に返済期間が長く残っている場合は、単独ローンへの借り換えは極めて難しくなりますのでご注意ください。
2-4. 財産分与でトラブルになりやすい
財産分与は原則折半(50対50)ですが、ペアローンの比率が7対3など均等ではない場合には、売却代金や売却益の分与で揉める可能性があります。「こちらが頭金を出した」「こちらが多く返済している」などお互いが主張して折り合いがつかない場合は、話し合いが長引き、離婚にかかる負担が大きくなります。
2-5. オーバーローンだと売却が難しい
住宅の売却価格がローンの残債を上回ることを「アンダーローン」と言います。この場合は売却代金でローンを完済することができるため、抵当権を抹消した状態で住宅を売却でき、財産分与もしやすくなります。しかし、売却価格が残債に満たない「オーバーローン」の状態では、不足分を自己資金や新たなローンで賄わないと売却ができません。金融機関と相談し任意売却を行う方法もありますが、手続きに時間がかかったり、残債の返済義務が残る可能性があります。
3. ペアローン住宅をスムーズに売却するためのポイント
離婚によってペアローンの住宅を売却する場合、以下のような段取りで進めるのが一般的です。
① ローン残高確認・売却価格査定
② 財産分与の検討・売却方針の合意
③ 仲介会社(不動産会社)の選定・契約
④ ペアローン解消方法検討・決定
⑤ 売却活動開始
⑥ 決済・引き渡し・ペアローン解消
⑦ 離婚届提出・新生活スタート
ペアローン住宅の売却を進める際には特に以下の点に注意しましょう。
Point 1. 現状のローン残高と住宅の資産価値を把握する
離婚問題が起きているときにはお互いに感情的になりがちですが、住宅の売却については冷静に順序立てて行動することが重要です。まずはローン残高がいくら残っているのか、住宅の資産価値がどれぐらいなのかを確認しましょう。価格査定は通常不動産会社へ依頼しますが、その前に査定サイトで確認しておくとよいでしょう。
ローン残高の確認
金融機関に相談し、夫婦それぞれの残高証明書または返済予定表を確認。合計の残債を1円単位で把握します。
住宅の資産価値の確認
不動産会社に査定を依頼し、住宅の現状の資産価値がいくらになるのかを確認します。身近に信頼できる会社がない場合は、一括査定などを利用して複数の不動産会社に依頼しましょう。
Point 2. 離婚届を出す前に売却する
前述の通り、ペアローンの住宅を売却する際には2人の署名、捺印、印鑑証明書、住民票、本人確認書類などが必要です。離婚した後で名字や住所が変わると、登記名義人の氏名変更や金融機関への住所変更手続きなどが発生し、余計な手間と費用がかかります。別居した後では、書類のやりとりや連絡も面倒になりますので、なるべく早く売却手続きを行い、離婚成立前に完了させることをおすすめします。離婚前に売却が完了すると、税制面でもメリットがあります。
居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例
マイホームを売却して利益が出た場合、譲渡所得から最大3,000万円の特別控除を受けられます。離婚前に売却した場合は、それぞれの持ち分に対して最大3.000万円ずつの控除を受けられる可能性がありますが、離婚して住まなくなった日から3年目の12月31日を過ぎると、この控除は受けられなくなります。この控除を受けるためには他にもいくつかの要件を満たす必要があります。詳細は国税庁のWebサイトをご確認ください。
Point 3. 信頼できる不動産会社に仲介を依頼する
離婚の話し合いはともすると感情的になりがちです。ペアローンの住宅を売却する際には、夫婦の間に立つ中立的なアドバイザーとして不動産会社を活用することをおすすめします。財産分与をふまえた売却プランの提案や、夫婦それぞれへの個別連絡や事務手続きの代行、引っ越し先探し、引越し業者の手配など、煩わしい手続きを任せることができます。
4. 売却以外の選択肢とメリット/デメリット
離婚しても住宅はすぐに売却せず、一方がそのまま住み続ける、賃貸住宅として運用するなどの選択肢もあります。ただしペアローンの住宅には、単独ローンの場合にはない課題がありますので、きちんと把握した上で検討しましょう。
4-1. 一方がそのまま住宅に住み続ける場合
子どもを転校させたくない、周辺環境が気に入っているなどの理由で、住宅を売却せずに夫婦のどちらかがそのまま住み続けるという選択肢もあります。一般的にはこの場合、住宅の資産額からローン残高を引いた額のうち、相手の共有持分に相当する額を代償金として支払い、単独名義に変更します。ペアローンを残したままでは前述のように一方の返済が滞るリスクがあるため、単独ローンへの変更もあわせて検討されることをおすすめします。
メリット
- 引っ越しの必要がない(一方のみ)
- 現在の生活を維持できる(一方のみ)
- 子どもを転校させる必要がない
- 売却するための手間や時間が要らない
- 資産として残すことができる
デメリット
- 代償金を用意する必要がある
- 代償金額を決めるための話し合いが必要になる
- 住宅の名義変更を行う必要がある
- 単独ローンに切り替える必要があり、審査に通らないと切り替えられない
- 単独ローンに切り替えると、以後の返済額が高額になる
- 修繕費、管理費、固定資産税などの維持費がかかる
4-2. 賃貸住宅として運用する場合
夫婦ともに引っ越し、住宅を賃貸として貸し出すという選択肢があります。住宅を資産として残しながら、家賃収入を得て、ローンの返済に充てます。共有資産のままで賃貸住宅にすると、将来売却するときにお互いの同意が必要になるため、前項と同様にどちらかの単独名義にすることをおすすめします。またペアローンも解消し、単独ローンに切り替えておいた方が安心です。
メリット
- 資産として残すことができる
- 家賃収入をローンの返済に充てられる
- 売却するための手間や時間が要らない
- 将来の売却や住み替えなどの選択肢を残せる
デメリット
- 空室になると家賃収入を得られない
- 修繕費、管理費、固定資産税などの維持費がかかる
- 代償金を用意する必要がある
- 代償金額を決めるための話し合いが必要になる
- 住宅の名義変更を行う必要がある
- 単独ローンに切り替える必要があり、審査に通らないと切り替えられない
- 単独ローンに切り替えると、以後の返済額が高額になる
- 賃貸を開始して3年経つと、譲渡時の特別控除が受けられなくなる
4-3. 将来売却する前提で、共有資産のまま保有する場合
オーバーローンですぐに売却できない場合や、将来市場価格の上昇が見込める場合などに、将来どのタイミングで売却するかを決めて、そのまま保有するという選択肢もあります。この場合は資産の共有とペアローンが残ったままになり、売却の際に改めて話し合いが必要になるため、お互いを信頼できる関係であること、離婚後もその関係を維持できることが大前提です。また売却までの期間、どちらかが住み続けるのか、賃貸にするのか、管理方法を決める必要があります。
メリット
- 資産として残すことができる
- 売却するための手間や時間が要らない
- 離婚時の財産分与をしやすい
デメリット
- 離婚後も関係を続ける必要がある
- 売却までの管理方法を決める必要がある
- 修繕費、管理費、固定資産税などの維持費がかかる
- 将来改めて2人で売却の検討をする必要がある
- 一方の返済が滞るなどのリスクが残る
5. ペアローンで住宅を購入する際の注意点
ここで、ペアローンで住宅を購入する際の注意点もご紹介しておきます。夫婦の住まいを購入するときに離婚のことを考えたくはないと思いますが、可能性はゼロではありません。万が一に備えて、トラブルを未然に防ぐための準備をしておきましょう。
5-1. 共有持分の比率と出資比率を同じにしておく
ペアローンを組む際、登記簿に記載する夫婦それぞれの所有権の割合(共有持分)は、必ず実際の資金負担割合(ローンの借入額 + 頭金の負担額)と一致させましょう。一方が頭金を出したり、ローンの比率を高く組んだのに、「夫婦だから半分ずつにしよう」などの理由で5対5にしてしまうと、差額分の資金が贈与されたとみなされ、贈与税が課される可能性があります。
5-2. 「公正証書」や「合意書」を作成しておく
新婚のときや住宅を購入したときには、離婚する可能性など考えたくないものです。しかしペアローンを組む以上は、将来関係が破綻する可能性や一方が返済不能になる可能性をふまえ、売却手続き、名義変更、単独ローンへの変更などのルールを取り決め、書面にしておくことをおすすめします。できれば法的効力のある「公正証書」や「合意書」を作成して、万が一に備えましょう。
5-3. 収入減少に耐えられる返済計画を立てる
ペアローンには借入可能額が高くなるというメリットがありますが、上限まで借りてしまうといざというときに返済できなくなるリスクがあります。妊娠や出産による育児休業や時短勤務、転職、退職などによる世帯年収の減少を考慮して、無理なく支払うことができる返済計画を立てましょう。
5-4. 団体信用生命保険の保障範囲を理解しておく
ペアローンを組むときには、夫婦それぞれが個別に団体信用生命保険(団信)に加入します。一般的なペアローンでは、万が一どちらか一方が死亡した場合に、この保険によって亡くなった人のローン残高はゼロになります。しかし、もう一方のローン残高はゼロにはなりませんので、その場合にもローンを払い続けられるように、別の生命保険に加入するなど、綿密な資金計画・返済計画を立てておきましょう。
6. まとめ
ペアローンには借入可能額の増額などのメリットがありますが、売却の際には単独ローンにはない検討課題や手続きなどが生じます。お互いの話し合いや協力が必要なため、相手に会えない、会いたくないという状態では売却が進まず、離婚成立までに時間がかかってしまう可能性もあります。離婚後のトラブルを避けるためにも、売却する際の課題や注意点をお互いが理解し、スムーズな売却を目指しましょう。困ったとき、悩んだときには2人だけで解決しようとせず、信頼できる不動産会社に相談されることをおすすめします。
執筆:ライターS
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