賃貸経営ニュース
2025年11月1日
人気再燃!民泊物件の開業・運営のポイントは?

2030年に訪日客数6000万人。民泊需要はさらに広がる?
ここ数年、民泊は投資先として再び注目を集めています。
国内で民泊の制度化が本格化したのは、2018年の「住宅宿泊事業法(民泊新法)」の施行からです。
当時は急増する訪日外国人旅行者(以下、訪日客)に対して宿泊施設が不足し、多くの投資家が民泊分野に参入しました。
観光統計によると、訪日客数は2013年に約1,000万人でしたが、6年後の2019年には3倍以上の3,188万人に急拡大しました。
しかし、2020年のコロナ禍の影響によって状況は一変します。
訪日客数は激減し、2021年には25万人まで落ち込み、経営難に陥る民泊施設も目立ちました。
ところが2023年以降は急速に回復し、2024年には3,687万人とコロナ前を上回る水準に達しました。
さらに2025年には「大阪・関西万博」があり、宿泊需要のさらなる上積みが期待されています。
一部では「万博が閉幕した後は民泊市場が縮小してしまうのでは?」との懸念もあります。
しかし、日本政府は2030年に訪日客数6,000万人という高い目標を掲げています。
この目標が実現することを前提にすると、民泊需要は一過性ではなく、むしろこれからが本番といえるでしょう。

改めて整理したい!民泊新法と旅館業法の違い
民泊投資に関心を持つ方にとって、まず押さえておきたいのが「どの法律に基づいて運営するのか」という点です。
そもそも「民泊」という言葉に明確な法的定義はなく、一般的には住宅を活用して宿泊サービスを提供する形態を指します。
民泊を開業する際は、以下3つの制度のいずれかを選ぶ必要があります。
① 旅館業(旅館業法)
② 特区民泊(国家戦略特区法)
③ 住宅宿泊事業法(民泊新法)
それぞれの特徴を比較してみましょう。
① 旅館業(旅館業法)
ホテルや旅館などを運営するための許可です。
ただし、建物の構造や設備、用途地域の制限など要件が厳しく、個人投資家や旅館業の経験がない法人にとってはハードルが高めです。
② 特区民泊
国家戦略特区に指定された地域でのみ認められる制度です。
訪日客の受け入れ促進を目的としており、一定の条件下では旅館業法より柔軟な運用が可能ですが、対象エリアが限定される点がネックとなります。
③ 民泊新法(住宅宿泊事業法)
2018年施行の法律で、個人投資家が最も利用しやすい制度です。
大きな特徴は、旅館業が認められない住居専用地域でも開業できる可能性がある点です(最終的には自治体の条例による)。
一方で、「年間180日以内」という営業日数の上限が設けられており、安定的に高稼働を目指す場合には工夫が求められます。

民泊向きの物件は?エリアによって人気の種類が異なる
民泊を始めるには、まず「物件をどのような形で用意するか」を決める必要があります。
大きく分けると、①持ち家を活用、②賃貸物件を利用、③物件を取得の3つの方法があります。
民泊に活用される物件はさまざまですが、観光庁が2,176物件の民泊を対象に実施した「住宅宿泊事業の実態調査」によると、多いのは以下の3種類です。
・マンション:38.6%
・一戸建て:32.6%
・アパート:15.5%
エリア別に見ると傾向が分かれます。
●関東・中部・九州・沖縄:マンションが主流
●東北・中国・四国:一戸建てが主流
●北海道:アパートが多い
たとえば、地方で一戸建てによる民泊を行った場合、以下のようなメリットが享受できます。
・集合住宅よりも利益率が高い傾向がある
・集合住宅よりも騒音の苦情が入りにくい
・初期費用や運用コストが抑えやすい
集合住宅で民泊をする場合、一般的に最寄り駅から徒歩10分圏内だと集客しやすいと言われます。
最寄り駅から徒歩11分以上の物件は、独自性の高いデザインやサービス・設備などで差別化するのがポイントになります。

民泊開業の初期費用は?半数が300万円未満
民泊を始めたいとお考えのオーナー様にとって、気になるのは「初期費用がどのくらい必要か」でしょう。
観光庁の調査によると、全体の約半数が300万円未満で開業しています。
・100万円未満:27.0%
・100~300万円未満:29.0%
一方、法人を含む一部では3,000万円以上を投じているケースが約17%(うち、1億円以上:7.7%)あります。
つまり、小規模な投資から大規模な一棟運営まで、幅広いスタイルが存在しているのが民泊の特徴です。
民泊開業で想定される初期費用の内訳は、以下の通りです。
① 物件購入
・自己所有物件を活用すれば不要
・購入する場合は投資規模によって大きく変動
② 家具・家電
・冷蔵庫、電子レンジ、洗濯機、ドライヤーなどが必須アイテム
・コストを抑えるならリサイクルショップやフリマアプリ(メルカリ、ジモティーなど)が有効
③ 行政への届出費用
・行政書士に依頼すると数十万円かかる
・自分で手続きすれば大幅に節約可能
④ 消防設備
・避難誘導灯、非常灯、火災報知器などを設置
・物件の規模に応じて数十万円かかるケースが多い
民泊運営の3つの注意点と対策
民泊の運営にあたってオーナー様が押さえておきたい注意点は以下の3つです。
① 近隣住民とのトラブルリスク
最も多いのが騒音やゴミ出しに関するトラブルです。
【対策例】
・事前にネット上でルールを明確に説明(多言語対応)
・室内に注意書きを掲示
・開業前に近隣への挨拶を実施
② 防犯上のリスク
鍵の管理が甘いとゲストや近隣住民の安全が脅かされます。
【対策例】
・リモートロック、スマートキーを導入
・出入口や共有部の防犯カメラ設置
③ 物件や設備の破損リスク
ゲストによる家具・設備の破損は珍しくありません。
【対策例】
・高級品や壊れやすい物を置かない
・破損時は法的措置を取る旨を事前に明記
・保険加入も検討
