賃貸経営ニュース
2026年4月1日
令和8年度税制改正で賃貸経営はどう変わる?

賃貸オーナーが注目すべき税制改正の3つのポイント
今回の税制改正において賃貸オーナー様が特に注意したいポイントは、以下の3点に集約されます。
・貸付用不動産の相続税評価の厳格化
・不動産小口化商品の評価方法の見直し
・高所得者層に対する最低税率制度(通称:ミニマム課税)の強化
とくに、相続の直前に貸付用不動産(投資用不動産)を購入して相続税評価額を引き下げるスキームについては、今後は通用しにくくなる方向性がはっきりしました。
ただし、これは賃貸経営、不動産投資そのものの価値を否定するものではありません。
短期の節税目的での購入は難しくなりますが、これからは長期保有が前提の「堅実な賃貸経営」が重要です。
これからの資産防衛に必要なポイントも含め、税制改正の詳細をわかりやすく解説していきます。
※本稿は、大綱ベースのものです。最終的な改正内容は、報道や条文・通達などでご確認ください。

ポイント1:相続開始前5年以内の物件評価が厳しく
令和8年度税制改正大綱では、2027年(令和9年)1月1日以後に発生する相続等から、相続開始前5年以内に取得・新築された貸付用不動産の評価方法を見直す方針が示されました。
従来、不動産の相続税評価は、
・土地:路線価/倍率方式
・建物:固定資産税評価額
を基準としていました。
この場合、実際の価格よりも低い評価となるケースが多く、「評価差」を活用した相続税圧縮が可能でした。
今後は原則として、相続時点の「通常の取引価額(時価)」を基準とした評価に近づける方向です。
実務上は、まず取得価額をベースに地価変動等を考慮して算定。課税上の弊害がない場合には80%相当額で評価できるという制度になる見込みです。
これにより、相続直前の「駆け込み取得」による大幅な評価圧縮は難しくなります。
なお、一定の経過措置や適用除外も示されているため、個別事情による判断が不可欠です。
税制改正を踏まえた今後の賃貸経営の考え方
今回の改正は、単なる評価額の計算変更ではありません。これまで通用していた「亡くなる直前に買って相続税を圧縮する手法」が終わりに近づくことを意味しています。
これからの賃貸経営は、節税メリットのみを追うのではなく、「投資としての健全性」がより問われます。
以下のポイントを押さえて、相続対策を再設計しましょう。
【「短期節税型」から「長期収益型」への転換】
相続前5年以内に購入した物件は、購入価格に近い金額で評価されるため、節税効果が限定的になります。
少なくとも5年以上の保有を前提とした計画設計が必要です。
【5年の壁を逆手に取った早期対策】
現時点では、5年経過後は従来の路線価等による評価が適用される可能性があります。
相続対策が必要な場合は、被相続人(オーナー様)の年齢や健康状態も踏まえ、時間軸を逆算した資産組み換えが重要です。
【持続可能な賃貸経営のチェックリスト】
「長期収益型の賃貸経営」へと舵を切る際、以下の要素を高い次元でバランスさせることが不可欠です。
・収益の安定性
・長期修繕計画
・明確な出口戦略
ポイント2:不動産小口化商品の評価が取引価額ベースに
今回の税制改正大綱では、不動産小口化商品(任意組合型等)についても、評価方法の見直し方針が示されました。
そもそも「任意組合型」とは、複数の投資家が出資して「任意組合」を作り、共同で不動産を購入・運営する仕組みです。
その最大の特徴は、投資家が不動産の「共有持分」を直接所有する点にあります。
今までは現金(額面100%評価)で保有するよりも、不動産(路線価等による評価)として保有する方が相続税評価額を大幅に下げられるため、効果的な相続対策として活用されてきました。
しかし、2027年(令和9年)1月1日以後に発生する相続等から、「通常の取引価額(時価)に相当する金額」で評価される方向です。
これにより、不動産小口化商品を活用した「相続税の圧縮効果」は大幅に縮小する見込みです。
今後は節税効果のみを期待するのではなく、「その物件が、節税抜きでも本当に稼げるか」を見抜く力が求められます。

ポイント3:高所得者への最低税率制度の強化
今回の税制改正で、不動産の売却を考えているオーナー様が見逃せないのが、「高所得者に対する最低税率制度」の強化です。
所得税の基本は、所得が増えるほど税率が上がる「累進課税(最高税率45%)」です。
一方で、所得1億円を超える高所得者は、実際の税負担率が下がる傾向があります。理由は、所得税率15%(住民税と合わせて約20%)の不動産や株式の売却・配当の比率が高いケースが多いからです。
この不公平を是正するため、2025年から「通称:ミニマム課税」が導入されました。
これは、以下の合計所得が3.3億円を超えた部分に対し、その22.5%にあたる金額が、「最低かかる所得税」になる制度です。
・総合課税の所得(給与所得や事業所得など)
・分離課税の所得(不動産の譲渡所得など)
・株式譲渡所得や配当所得
令和8年度税制改正大綱では、この最低税率が強化されます。
所得1億6,500万円を超えた部分の30%にあたる金額が「最低かかる所得税」となります。
適用された場合の税金計算の流れを見てみましょう。
1.通常の所得税を計算
2.最低納めるべき所得税を計算:所得1億6,500万円を超えた部分の30%にあたる金額を計算(計算式:(基準所得金額-特別控除額1.65億円)×税率30%)。
3.「最低納めるべき所得税」が「通常の所得税」を上回った場合、その差額を追加納税
ここでオーナー様に注意していただきたいのが、高額物件の売却益です。
これまで通り「長期譲渡所得は約20%の課税で済む」と考えていた場合、最低税率制度により追加納付が発生し、手元のキャッシュが思ったよりも少なくなる可能性があります。
この新しいルールは令和9年(2027年)分の所得税から適用される見込みです。
不動産売却を検討しているオーナー様にとっては、実行時期の判断が非常に重要になります。
今回の「令和8年度税制改正大綱」は、不動産オーナーや高所得者にとって、これまでの常識が通用しなくなる大きな転換点となります。
しかし、改正内容をしっかり捉え、早めに布石を打つことで、その影響を最小限に抑えることが可能です。

