賃貸経営ニュース
2026年3月1日
確定申告後に見直したい!賃貸経営の「真の利益」とは?

確定申告の数字を、次なる一手のヒントにする
確定申告を終えた後、多くのオーナー様が次のように感じているのではないでしょうか。
「帳簿上は黒字なのに、手元に残る現金が少ない気がする」
「来期は赤字を減らしたい」
「これから先、安定収入を稼ぎ続けられるだろうか」
確定申告は、単なる「過去1年間の結果報告」ではありません。申告書に並んだ数字には、次の1年の賃貸経営を改善するためのヒントが隠されています。
申告書を「納税のための義務」で終わらせるのではなく、未来の収益を最大化するための材料にしましょう。

「税引前利益」でその物件が稼ぐ力が見えてくる
賃貸経営において、チェックすべき指標は数多くあります。
「満室想定家賃」や「利回り」なども重要ですが、長期的に健全な経営を続けるためには、「税引前利益(不動産所得)」を意識することが欠かせません。
税引前利益は、「その物件がどれだけ稼ぐ力を持っているか」を示す指標です。いわば、物件の真の実力と言えるでしょう。
「税引後利益の方が大切では」と考えるオーナー様もいるかもしれません。しかし、税引後利益は、オーナー様個人の所得や控除といった「個人の事情」に大きく左右されます。
たとえば、給与所得が高いオーナー様ほど所得税率が上がるため、同じ物件を運営していても税引後の手残りは少なくなります。
これでは、物件の純粋な稼ぐ力が分かりません。税引前利益で物件の稼ぐ力を把握し、今後の修繕計画や出口戦略を冷静に判断することが重要です。
「税引前利益」を増やすための具体策
個人事業主の場合、青色申告決算書(不動産所得用)の差引金額が、税引前利益(不動産所得)です。計算式はシンプルです。
不動産所得 = 総収入金額 − 必要経費
つまり、収入を増やす、または経費を減らすことが不動産所得を高める方法ということです。具体的な施策は、以下のとおりです。
収入を増やす(トップライン引き上げ)
空室対策による稼働率の向上と並行して、「1室あたりの賃料」「家賃外収入」の底上げに力を入れることが、税引前利益を最大化する鍵を握っています。
●賃料相場の確認と改定
1室あたりの収益を高める第一歩は、現行の賃料が周辺相場と合っているかを確認することです。
相場より割安な場合は、家賃値上げ交渉や、新規募集時の賃料見直しなどを検討しましょう。
●家賃外収入の多角化
敷地の余剰スペースを「資産」として捉え直し、駐輪場やトランクルームの設置などで収益源を増やします。
自動販売機の設置も人気ですが、通行量などによって収益が大きく変わってきます。そのため、慎重な市場調査が欠かせません。

経費を減らす(コストの最適化)
経費削減において重要なのは、「安かろう悪かろう」ではなく、コストパフォーマンスを意識した「コストの最適化」の視点です。
たとえば、管理手数料を強引に削減すると、サービス品質の低下を招き、入居者満足度やリーシングに悪影響を及ぼすリスクがあります。このため、経費削減はサービスに影響しない固定費から着手しましょう。
●共用部電気代の削減
昨今の光熱費上昇に伴い、共用部の電気代見直しは有効な手段です。
月々の削減額は、わずかな金額かもしれません。
しかし、電気代は継続的に発生する経費であるため、「共用灯のLED化」や「電力会社の切り替え」などによって長期的なキャッシュフローに大きな差が生まれます。
注意点としては、電力会社に切り替えた結果、逆に電気代が上がるケースもあります。
現在の料金プランと条件を十分に比較し、「切り替えによって本当に経費が削減できるか」を慎重に見極める必要があります。
●定期清掃の見直し
現在、入居者から共用部の清掃に関するクレームがなく、かつ清掃回数が過剰に設定されている場合は、見直しの余地があります。
ただし、清掃回数をやみくもに削るのではなく、「美観が維持できる範囲で回数を調整できないか」を管理会社と相談してみましょう。
あくまでも、適正な回数にすることが大事です。

最適な経営判断のためのケーススタディ
確定申告で算出された「税引前利益(不動産所得)」は、以下のような要素と組み合わせることで、最適な経営判断がしやすくなります。
・減価償却の期間:減価償却の額や残り期間
・借入状況:ローンの残債や金利、残り期間
・物件の状態:築年数や大規模修繕の履歴
・内部留保:余裕資金
税引前利益とこれらを掛け合わせることで、「設備投資をすべきか」「家賃設定を見直すべきか」「現状維持が最適か」など、有効な次の一手が見えてきます。
一例として賃貸経営でよく直面する、2つのケーススタディで考えてみましょう。
●減価償却が大幅に減少した物件
築年数が進むと、帳簿上の経費である「減価償却費」が減少しやすくなります。
これにより、税務上の「不動産所得」が増え、納税額が急増する傾向にあります。その結果、帳簿上の利益は多いのに、手残りが少ない現象が起きやすくなります。
【経営判断のヒント】
直近の税引前利益が十分に出ており、内部留保に余裕があるなら、増えた不動産所得を将来の空室対策のために「物件性能や設備のグレードアップ」に充てるという選択が有効です。
これにより、税負担をコントロールしながら、稼ぐ力を底上げできます。
●ローン返済中の物件
ローン返済中の物件では、毎月の返済によってキャッシュの流出が発生します。
そのため、空室が発生すると、オーナー様はプレッシャーから「早く埋めるために家賃を下げるべきか」といった短絡的な判断に陥りがちです。
【経営判断のヒント】
目先の空室を埋めるための「安易な家賃値下げ」は、避けるべきです。
なぜなら、一時的に稼働率を改善するものの、長期的な収益性を損なうリスクがあるからです。
家賃値下げの前に「一時的な負担(敷金礼金の減額やフリーレント)」で済む施策を検討してみましょう。
また、状況によっては、あえて家賃値下げをして稼働率を高めた方が良い場合もあります。
税引前利益を見て「多かった、少なかった」と一喜一憂で終わってしまっては意味がありません。
重要なのは、その数字を冷静に見つめ、「次に何をすべきか」を正しく判断することです。

